この文章をお読みになる女性の方にあえて申し上げたいのは、何事も基礎や土台が大切であって、目先の美しさにとらわれてはいけないということです。家を建てるにも、土を盛り、土台をきちんと固めてから柱を建てなければ長持ちはしません。学問もそうです。基礎の完成がなければいくら傾向と対策をたてて受験に臨んでもムダです。生活設計も同じです。生活の基礎もないのに「愛している」と繰り返しても、その愛はガラス細工のようなものです。女性の美しさもそれと同じです。いくらゴテゴテ外装だけを美しく塗装してみたところで、それはその女性のほんとうの美しさではありません。女性のほんとうの美しさや魅力というものは、素肌からにじみ出てくる美しさであり、言い換えるならば、内面からにじみ出てくる健康な美しさといえましょう。
本当に心の優しい人というのはいつも目元、口元がやさしくほころんでいます。内面から優しさ、美しさがにじみでてくるからです。私は美の追究者である女性に対して、化粧はいけない、化粧はするな、とはいいません。そんなことをいえば女性の逆麟にふれ、呪い殺されかねません。また、私は化粧品の研究をしたこともなければ女性の美容法や装飾品についてもあまり関心がありません。ただ、女性のみずみずしさ、美しさは内面からにじみ出てくるものだということを強調したいのです。みずみずしいとか、しっとりしている、というのはカサカサしている、ということの反対ですね。つまり、皮膚が潤っている、水けがあるということです。
ご承知のように人間の皮膚は半透膜と呼ばれる無数の穴のあいた膜に包まれ、内粘膜をふくめ人体すべて穴だらけといっていいくらいです。イオンが足りなくなってきますと、この半透膜下に密接している体液(リンパ液)の運動がにぶり、そのことが皮膚の乾きになって表面化してしまうのです。たとえば、唇が乾くと自然に舌の先で唇をなめます。このなめてツバをつける役が自律神経なのです。胃や腸に宿便がたまり、イオンが欠乏しリンパ液の循環がわるくなる~これが皮膚の乾き~カサカサなのです。
とかく人間というものは、大切な自分の体であっても、目に見えないところに対してはおろそかになりがちなものです。皮膚がわるいといって薬はつけても、皮膚が悪くなった内臓の原因についてはあまり深くは考えません。女性はまず素肌という土台づくりにいそしんでいただきたいものです。女性の肌というものは、十分に血行をよくし、肌に水分を与えてやるだけで生き生きとしてくるものなのです。そのうえで自分にあった化粧品を選び、化粧を落とすときはよくふき取って、つねに清潔にしておく以外に方法はありません。