宿便をとったことで体調はきわめて良好となりましたが、それだけではまだ完璧だとはいえません。人体を動かしているのは胃腸という機関車ですが、その人体を指揮しているコントロールタワーは自律神経だからです。胃腸の働きが健全になっても私たちの全機能を統合している自律神経をおろそかにしてはなんにもなりません。
私はそのために、海草が海水からイオンを摂取するように、皮膚面からイオンを体内に補充してやること『イオン入湯法』を研究してみたのです。
まず家庭のお風呂について考えてみたいと思います。イオンに深い関係があるからです。私たち日本人は風呂好きな国民として知られています。お風呂に入るということは、もちろん皮膚の汚れを洗い流して清潔にし、血行をよくし、心身の疲労を和らげてくれます。ぬるめのお風呂にゆっくりとつかっていますと体内の血行がよくなり、不良体液が外に排出されます。 よく、「一番湯に入るよりも、風呂は女性の後に入れ」といわれます。というのは、女性が入った後のお風呂は有機物で汚れていて、肌になめらかだからです。女性が入ったあとにかぎらず垢や汗が混じっているお風呂の方がよいのです。なぜよいのかといいますと、一番湯は不純物がないため熱の伝導が速く、肌を強く刺激するからです。そればかりではありません。体の中のミネラルも塩分も吸い出されてしまうのです。これはまことに由々しき問題です。
お風呂は確かに皮膚の汚れをとり、血行をよくし、疲れをとってくれます。でもイオンという点から考えますと淡水のお風呂は好ましくないのです。淡水のお風呂に体をつけますと、私たちの体内にある貴重なイオンは体外へ出ていってしまうのです。
先に私は、イオンは水の中にある、と申し上げました。確かにあります。でも体内にあるイオン量と比較しますと、それはきわめて微量なものなのです。私たちの体内にイオンが100あるとするならば淡水の中にあるイオンは1なのです。イオンは電荷ですので高いところから低いところへ流れる性質をもっていますので、体の中のイオンは淡水のほうへ出ていってしまうのです。一番湯でも二番湯でも、しまい湯であっても、イオンは体外へ出てしまいます。つまりお風呂へ入るということは私たちの体内のイオンを流出させているということになるのです。
こう考えていきますと、普通のお風呂よりも、シャワーのほうがよい、と言えましょう。シャワーは皮膚面の汚れを洗い流すだけだからです。汗の成分である食塩は強電改質ですので湯の放射だけで流れ落ちてくれるからです。だからといって私たちはシャワーを浴びるだけではお風呂へ入った気分にはなれません。やはり湯ぶねの中でどっぷりと顎までつかり、存分に手足を投げだし、快いアクビにまぶたをうるませたいではありませんか。もっと理想をいうならば、お風呂の中で体内のイオンを流出させずに、逆にイオンを体内へ送り込んでやることはできないものでしょうか。その方法があるのです。それは温泉なのです。