私たちの生活に欠くことのできない、知覚・感覚・味覚・愛情・理性・そして喜怒哀楽・暑さ・寒さ・痛み・嫌悪などの神経組織はもちろんのこと、体の中の内臓器官、分泌する化学物質…これらを、もし人工的につくるとするならば、それらの機械をならべるだけで地球全土の表面積が必要だといわれております。そしてもし、かりにそれらの超精密機械工場ができあがったとしても、分泌液を各器官に輸送するタイミングとか、質や量の調整点検は、その人の自律神経以外では果たすことができないのです。私たちの体というのはそれほど偉大なものです。そして、その想像を絶する人体をコントロールしているのが自律神経なのです。いわば自律神経は人間のコンピューター司令部だといっても良いくらいです。
私たちの明晰なコンピューター司令部が、日夜休みなく、私たちの目に見えないところで私たちを支えてくれています。そしてこの命の綱ともいうべき自律神経の原動力となっているのがイオンなのです。イオンを積極的に身体に取り入れることで自律神経の働きを助けてあげることが大切です。
イオンは私たちの目に見えません。イオンは電気ではありませんが、電気の性質をもっている物質と思ってください。大気中には目に見えない元素が90種類ありますが、この元素が水に溶解するとイオンになるのです。ですから波打ちぎわとか、滝や噴水のしぶきが大気中にイオンを発生させてくれます。私たちは、そのしぶきを浴びて立つと、とてもすがすがしい気分になります。それはイオンが私たちの呼吸機能を高め、精神の安らぎを与えてくれているからです。
イオンは大気中にもありますが、雨が降り、土の中にイオンができ、植物はそのイオンを吸い上げて育ちます。イオンを吸収して育った植物を、牛や馬、ブタなど草食動物が食べます。それをまた人間が食べます。こうした自然の食物連鎖によって私たちは無意識のうちに自律神経の原動力となるイオンを取り入れています。
しかし、多忙な仕事や対人関係のトラブル、不規則な生活、病気などで、神経を消耗すればするほど私たちの体内のイオンは不足してしまいがちです。そして、これが高じてくると自律神経の働きが低下して、病の基礎が芽生えてしまうのです。健康を守るためにはイオンを身体に補ってあげることが大切なのです。
病気、あるいは病後の体力回復に温泉が良いということは、昔からよく知られております。温泉というのは火山の地下にあるマグマによって地下水が暖められ、地中のいろんな物質を含んで地表に噴出したものです。温泉にはカルシウムイオンやナトリウムイオン、さらにクロール・ヒドロ炭酸、硫黄などのイオンがたくさん含まれていて、その湯に私たちが入ると、そのイオンが皮膚を通して体内に入ってきます。温泉は私たちの身体にイオンを補ってくれているのです。